頭角のドラゴン

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ものの十数分で、車は停車した。 運転中も窓から外を注意深く見ていたが、どうやらここは工事中のドームの様だ。 工事中……と言っても、俺が決闘都市に来た当初からずっと変わっていない場所だ。 怪しいとは思っていたが、どうやらここは秘密裏に使われている所らしい。 「さぁ、到着致しました」 俺がそこまで考えた所で、運転手が言ってきた。 ドアが勝手に開き、まずは怜衣乃が軽い足取りで車から出た。 「ヒロっち、早く出なよー」 「……あ、あぁ」 まだ車の中にいた為に怜衣乃がそう言ってきたので、俺は慌てて車から降りた。 するとベンツは直ぐ様ドアを閉めて、発進してドームから去ってしまった。 残させたのは、俺と怜衣乃のみ。 けれど、しばらくしない内に遠くから声が聞こえてきた。 「海堂君、天佳君!」 俺たちの名前を呼びながら駆け寄って来たのは、白いブレザー制服を着た育ちの良さそうな男子生徒だった。 あれは確か、聖マリナンテ学園の制服だ。 「迎えが遅くて済まない。決闘騎士団の長を勉めている、雛岸(ひなぎし)紫石(しせき)だ」 近付くにつれ、細かい顔立ちが分かるようになった。 漆黒の髪に高い鼻は、気品の良さをどことなく感じさせる。 だがそれでいて締まった雰囲気を漂わせている。 決闘騎士団のリーダーをしているのに、何ら違和感のない風貌だった。
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