頭角のドラゴン

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雛岸さんは事前に都市長さんから俺たちの事を聞いていたらしく、自己紹介は短く済んだ。 その後は雛岸さんの案内でドームの中へと入っていった。 「何だかワクワクするぅ!」 「あ、ああ……」 目をキラキラさせている怜衣乃とは対照的に、俺は警戒心マックスで気を張っていた。 ドームは外見こそ鉄骨だらけでいかにも工事中なのだが、中は清潔に整われていた。 やはりあれはカモフラージュの様なものらしい。 「海堂君、天佳さん、お待ちしておりました」 ドームの中を見渡していると、数回聞いたあの声が聞こえてきた。 決闘都市長の富片粧菜さんだ。 長い茶髪を揺らしながら、彼女は俺たちに歩み寄ってきた。 俺は少しだけ警戒を強めながら、富片さんに気になる事を投げ掛けた。 「富片さん、どうして怜衣乃もここに呼ばれたんですか? そして、どうしてそれを教えてくれなかったんですか?」 「海堂君、沢山聞きたい気持ちは分かるのですが、私は聖徳太子ではありません。一度に質問されてしまうと困ってしまいます」 富片さんにそう返されてしまい、俺は言葉を詰まらせた。 けれど富片さんはちゃんと1つずつ質問に答えてくれた。 「まず、天佳さんも呼ばれたのは、貴方と彼女の決闘で何か「面白いモノ」を感じたからです」
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