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……………。
『ひろき……デュエル、しよ?』
部屋のドアを開けながら、わたしはその中にいる男の子に恐る恐る話し掛けた。
ひろきは隅でうずくまっていたけれど、わたしの声に反応してひろきは顔を上げてくれた。
……でもひろきはうずくまった姿勢のまま、首を横に振ってきた。
『やらない……っ! 帰ってよ!』
そう大声を張り上げるひろきの声は震えていた。
デュエルマスターズ。
『あの出来事』以来、ひろきはその単語を聞く事を極端に恐れる様になってしまった。
『ひろき…………やろうよ……』
けれどわたしは諦めずに、ひろきにカードを渡そうとしてみた。
少し強引かもしれないけど、それがひろきの為だと思ったから。
でも…………
『いい加減にしてよ!!!』
ひろきがいきなりカードを奪い、そしてそれをゴミ箱へと投げ捨ててしまった。
その時のひろきの、恨むように睨む表情が……
……………。
「っ!!」
───今でも忘れられない。
「……夢」
慌てて周りを見渡してもここは『あの部屋』ではなく、聖ルチーク寮の自分の部屋のベッドの上。
あれは夢だった……みたいね。
気付けばアタシは寝汗でびっしょりと濡れている。
「……大輝……。『あの頃』に縛られたままなのは、あんただけじゃない……みたい」
こんな状態なのに、よくもアタシは大輝に「いい加減立ち直りなさいよ」なんて言えたものね……。
アタシは自虐するように呟きつつ、寝汗を拭きに起き上がるのだった。
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