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「こんな所に、女の子2人も侍らせてどうしたの?」
椋葉さんは悪戯な笑みを浮かべたまま、そんな事を言ってきた。
「は、侍らせてなんてないですよっ!」
確かに男子1人に女子2人ってのは特殊な状況だけど、その勘違いは馬鹿にならないので俺は慌てて否定した。
すると椋葉さんは片手を頬に当てながら、安堵の表情になった。
「あら、そうなの? なら良いんだけど。光葉が一緒じゃないから、つい焦っちゃったわ」
「菜季さんのお母さんなんですか?」
そんな椋葉さんに小鶴が尋ねてきた。
そいや2人に紹介しておかないと、と思って喋ろうとしたら、それを椋葉さんが制止してきた。
「自分で言うわ、大輝くん。初めまして、菜季椋葉よ。貴女の言った通り、娘がお世話になってるわ」
椋葉さんは丁寧に両手を脚に付けてお辞儀をした。
その品の良い動作に感化されるように小鶴と怜衣乃を慌てて頭を下げた。
「えっ、えっと……こ、小鶴友梨です!」
「天佳怜衣乃です。みっちゃんとは仲良くさせてもらってまーす♪」
小鶴と怜衣乃は顔を上げると、自己紹介を返していた。
それが終わったタイミングで俺は最初に椋葉さんが聞いてきた質問に答える事にした。
「俺たちは夏騎を追いかけに、ちょっと街の『外』に出ようとしてたんですよ」
「あら、『外』に? 夏騎くんがいなかったのはそういう事だったのね」
椋葉さんは納得した表情で頷くと、「それなら……」と呟いた。
……何をするつもりなんだろう?
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