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それから何やかんやありつつも、俺たちは出発する事にした。
初めは目的地が定まってないから中々動けなかったんだけど、アックスが少し離れた大きな建築物を指差したので、俺たちは一先ずそこを目指す事にしたんだ。
「そいや、ヒロっちってみっちゃんの母親さん公認なんだねぇ」
「ぶっ!!」
向かっている途中、突然怜衣乃が変な事を言ってきた。
いきなりの地雷爆破に吹き出してしまう。
「い、いきなり何言うんだよっ!?」
「やー、だってさ、「いつでも戻ってきて良い」なんてそうそう言われる事じゃないでしょ?」
怜衣乃はイタズラな笑みでニヤニヤしながら嫌なところを突いてくる。
……仕方ないか。
あんまり過去の事を語りたくない俺だが、仕方なく一言だけ呟いた。
「俺、両親いないから……菜季家に住んでた時期があったんだよ」
すると予想通り、場が一瞬静まってしまった。
少しして小鶴が気まずそうに口を開いた。
「あ、ああ……そうなんだ。ご、ごめんね?」
「そうなの? じゃあ、みっちゃんとヒロっちは同棲してたんだっ!」
けれど怜衣乃はマイペースっぷりを発揮し、別の部分を突っ込んできた。
「どっ、同棲じゃないし……。それに光葉は中学入学で聖ルチークに行っちゃったから、一緒だった期間なんてほとんどなかったから!」
俺は訂正しておきたい部分を口にしておいた。
それにそもそも、あの頃は何もかもふさぎ込んでた。
カードも……やめようと思ってた。
そう考えながら、アックスの方を見た。
アックスは視線に気づいてこちらを向くと、 軽くため息をついた。
うん、そうだ。
こいつが居たから、やめないでいられたんだよな。
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