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泣原のいる病室へ向かう途中、
「あれ、大輝たちどうしてここに……?」
廊下の先の小部屋から花瓶を抱えた夏騎が出てきた。
それには怜衣乃が答えた。
「いやさー、どうしてツキっちが時々、決闘都市から『外』に出られるのか。んでどこに行ってるのか知りたくてさぁ。」
「……ん、まぁ確かに特例だしな」
夏騎は気まずそうに頬を掻くと、病室の扉を開けた。
「とりあえず、話は中で話そう」
夏騎は遠慮なく『泣原』の部屋へと入って行ったが……
俺たちが本人の了承なしに良いのか?
そう考え躊躇ったのだが──それは杞憂だった。
「この人が、泣原さん?」
「うわー可愛い!」
『泣原』と思われる部屋の主は、ベッドの上で目を閉じていた。
様々なケーブルと管、それに繋がれた栄養剤や心配計がある事から、彼女は寝ているわけではないのが分かる。
墨のように美しい黒髪を長く伸ばしている少女だった。
恐らく俺たちと同年代。長年そのままだからか、かなり薄い肉付きだが……それでも端正な顔立ちのお陰で魅力は一切損なわれていない。
要するに何が言いたいのかというと、
……夏騎はこの子とどういう知り合いなんだろうか?
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