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しばらく俺は絵那と話をしていたが──
夕暮れを知らせるその鐘が、終わりを告げた。
「あ……もう、こんな時間なんですね。スミマセンでした、全然気付かないで……」
絵那が申し訳なさそうな、寂しそうな表情をしながら謝ってきた。
俺も慌てて返した。
「あ、いやいやっ! 全然大丈夫だし、それに凄く楽しかったから!」
「そう……ですか? なら良かったです」
俺がそう言うと、絵那は笑顔になってくれた。
──この笑顔を、また見たい。
そんな衝動に駆られた俺は、
「……明日も来て、良いかな?」
無意識に、そんな事を口に出していた。
────
───
──
それから俺は、週に3~4日程、絵那の病室を訪れていた。
……まぁそんなに頻繁に行っていれば、親友である大輝に気付かれないわけもない。
「最近、どこ行ってるんだ?」
「あー……えっと、ちょっと『外』まで、かな?」
俺は大輝に事実を濁して伝えた。
今まで色恋沙汰に余程強い関心がなかったから、恥ずかしかったんだ。
もう、気づいていたから。
自分の気持ちに。
俺は──絵那の事が、好きなんだ。
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