過去

16/40
前へ
/414ページ
次へ
「そんなに固まらなくても良いのよ。むしろ夏騎君には好感を持ってるわけだもの」 緊張している俺の様子に気付いたらしい、絵那の母親は笑顔で言ってくれた。 ……そうは言っても、「好感を持ってる」と言われると、余計に緊張してしまうのは俺だけなのか? 期待に沿えるのかな? と思ってしまうものじゃないだろうか? 「ちょ、ちょっとお母さん! 何でそう言うお話になってるのっ!?」 さすがに身内に対してはタメ語なのか、絵那は慌てて自分の母親に向けて焦りながら返答した。 (……やっぱり、絵那は──そうだよな……) 元々あっちが俺に対して好意を持ってるなんて、烏滸がましいと思っている。 けど、普段の態度を見ていると、少しだけでも期待してしまうのは……悪いのかな。 (俺は大輝と比べて……ルックス良いわけじゃないし、気が利くわけでもない。そんな俺を好きになってくれるわけが無い、よな) 自嘲めいた事を考えながら、溜め息をつくと、 「あ、すみません影井君……。ご迷惑をお掛けしてしまって」 絵那が頭を下げてきてしまった。 どうやら、自分の母親が俺に不快感を与えてしまったのかもしれない、と勘違いしてしまったらしい。 「あぁ、違う。 そう言う訳じゃ無いから」 とりあえず、その誤解は困るので慌ててそう否定しておいたのだった。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加