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「そんなに固まらなくても良いのよ。むしろ夏騎君には好感を持ってるわけだもの」
緊張している俺の様子に気付いたらしい、絵那の母親は笑顔で言ってくれた。
……そうは言っても、「好感を持ってる」と言われると、余計に緊張してしまうのは俺だけなのか?
期待に沿えるのかな? と思ってしまうものじゃないだろうか?
「ちょ、ちょっとお母さん! 何でそう言うお話になってるのっ!?」
さすがに身内に対してはタメ語なのか、絵那は慌てて自分の母親に向けて焦りながら返答した。
(……やっぱり、絵那は──そうだよな……)
元々あっちが俺に対して好意を持ってるなんて、烏滸がましいと思っている。
けど、普段の態度を見ていると、少しだけでも期待してしまうのは……悪いのかな。
(俺は大輝と比べて……ルックス良いわけじゃないし、気が利くわけでもない。そんな俺を好きになってくれるわけが無い、よな)
自嘲めいた事を考えながら、溜め息をつくと、
「あ、すみません影井君……。ご迷惑をお掛けしてしまって」
絵那が頭を下げてきてしまった。
どうやら、自分の母親が俺に不快感を与えてしまったのかもしれない、と勘違いしてしまったらしい。
「あぁ、違う。 そう言う訳じゃ無いから」
とりあえず、その誤解は困るので慌ててそう否定しておいたのだった。
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