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「死、ぬ……?」
「ええ、だから絵那は手術を受けなきゃいけない。いけない、んだけど……」
絵那の母親は、何故かそこで一度言葉を切った。
少しの空白の後、絵那の母親はハッキリと告げた。
「絵那が拒むのよ。手術を受けるのを」
「な、何で……?」
俺はその絵那が行ったらしい行動の意味が理解できずに、そう聞き返してしまった。
すると絵那の母親は、外していた視線を俺に向けて戻した。
ハッキリと俺を見つめながら──言ってきた。
「夏騎君。……貴方と少しでも一緒にいたいから、だと思うわ」
その言葉を聞いた俺は、より理解が出来なくなってしまった。
俺と一緒にいたいと考えてくれるのは、嬉しい。
だけど、何でそれが『手術を受けない事』に繋がるのか分からなかった。
俺は理解できずにいるのを察したらしい絵那の母親は、そのまま続けるようにして言った。
「……今の段階での手術は困難を極めてしまうらしくてね。成功率は──」
絵那の母親は、一度間を置いた。
俺は固唾を飲んで、言葉を待った。
「──30%、らしいの」
……その言葉を聞いて、思考が止まった。
30%、
一瞬、決して低すぎない数値だと錯覚してしまうが、
残りの70%は失敗だということで、
生死の関わる大事では、躊躇ってしまうのは当然だった。
事実、俺もその言葉を聞いて、血の気が引いてしまった。
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