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……………。
俺は、絵那の病室の扉を開けた。
すると絵那が驚いた顔をして、俺を見ていた。
……まぁ、当然だよな。
「あ、あれ……? 影井君……扉に掛けてあるの、見ませんでしたか……?」
酸素マスクを付けている絵那の言葉は、くぐもっている上に途切れ途切れだった。
あんまり長居するのは良くない。
そう思い、俺はすぐに本題を言い始めた。
「絵那のお母さんに、入れて貰った。絵那に話があるからさ」
「……話……ですか?」
俺の言葉に、絵那は首を傾けた。
それを聞いてから、俺は話し始めた。
「絵那──
手術を受けてくれないか……?」
「……っ」
俺の言葉を聞いた瞬間、絵那は驚いた表情をした。
そして、少し悲しそうな顔をしながら、途切れ途切れの言葉を呟いた。
「……お母さん……から、聞いた……んですか……?」
「ああ」
俺が頷くと、絵那は何かを考える様に目を閉じた。
少し時間を置くと、絵那は喋り始めた。
「……私は、怖いんです」
それは当然の感情だ。
誰だって死ぬのに恐怖する。
けれど次の絵那の言葉は、俺の考えとは違った。
「……死ぬのが、怖いんじゃ……ないんです。
──影井君と……離れるのが、私は……怖いのです」
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