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俺は急いで、絵那の入院している『外』の病院へと駆け込んだ。
止まらず走り続けたから、息も絶え絶えだが、病院内に入れても歩みは止めなかった。
「夏騎君……来てくれたのね」
手術室の方へ向かうと、すぐ傍のベンチに絵那の母親が座っていた。
まだ身体が酸素を欲している状態で声が上手く出せないので、俺は軽く会釈する事で返答をした。
「急いで来てくれたのね、ありがとう」
絵那の母親はお礼を口にしながら、俺を同じベンチに座らせた。
ようやく息が整い始めてくれたので、俺は質問をした。
「絵那は……中、ですか?」
手術室の赤く点灯しているランプを眺めながら聞いてみた。
絵那の母親はそれに頷いた。
それ以上の言葉は交わさなかった。
俺たちは、ただ手術室の扉に視線を向け続けるのみだった。
────
───
──
何時間経っただろうか。
ずっと見つめていた手術室のランプが、フッと暗くなった。
「終わった……?」
それからしばらくしない内に、見つめていた両扉から白衣の男が出て来た。
間違いなく、絵那の手術をしていた医師だろう。
「絵那は、絵那はどうなりましたか?」
絵那の母親が、懇願するような声で医師に尋ねた。
俺も固唾を飲んで彼の言葉を待った。
「……無事、手術は成功しました。しばらくすれば、彼女も目覚めるハズですよ」
その言葉を聞いた途端、俺も絵那の母親も身体全身の強張っていた力がフッと抜けるように、安堵できたのだった。
絵那……やったな……っ!
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