132人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな時、携帯電話が激しくバイブレーションをした。
誰かからの着信だ。
俺はすぐさまテーブルの上にあった携帯電話を手に取り、通話ボタンを押した。
「はい」
『おい、大輝! テレビ見たか!?』
夏騎の声が大音量で耳腔内に響いた。
瞬時に携帯電話を耳から話して逃れた後に、夏騎に問いかけた。
「テレビがどうかしたのか?」
『良いから点けろって!』
夏騎はかなり興奮している。
俺は言われるがまま、テレビのリモコンを手に取って電源ボタンを押した。
『それではもう一度お伝えします』
点いたのはたまたまチャンネルが合ってたらしい、決闘都市専門チャンネルだ。
そこにはキャスターの女性1人が映り、どうやら夏騎が俺に伝えたかった事をもう一度繰り返してくれるようだ。
『今朝、決闘都市長の富片粧菜氏が明後日の5月5日に、都市外にある決闘育成学校から集めた生徒たちと、決闘都市内から選出した生徒たちが交流試合をするというイベントを開催する事を発表しました』
交流試合、か。
あの都市長、そんな事をこんなギリギリまで隠していたのか。
俺はその事に少し疑いの眼差しを向ける。
何かありそうな気がする。
だが俺がそんな思考を巡らせている間にも、キャスターは淡々と言葉を続ける。
『選出された生徒は全9名。全て決闘都市を統括するスーパーコンピューターにてランダムに選んだと発表されています。……では、その9名をお知らせいたします』
キャスターがそこまで告げると、画面が切り替わる。
始めはただの真っ白な画面だったが、キャスターが選出者の名前を告げて行くと少しずつ名前が表示されていった。
『聖マリナンテ学園高等部3年、雛岸紫石。聖ルチーク学園高等部3年、杉寄千夜。アスタガンテ学院高等部2年、六尾将汰』
次々と名前が告げられていく。
雛岸さん以外は聞いた事がない名前だが……告げられるのと同時に顔写真が少しの間表示されるので、俺は気付いた。
3人とも決闘騎士団のメンバーだ。
『聖ルチーク学園中等部3年、菜季光葉』
更には4人目は、あの光葉だ。
突然光葉も決闘騎士団のメンバー。
……やはり都市長は決闘騎士団のメンバーを交流試合に利用しようとしている。
ランダムというのは決闘騎士団を浮き彫りにしないためのカモフラージュなんだ、と俺は把握した。
最初のコメントを投稿しよう!