女帝の実力

7/36
前へ
/414ページ
次へ
「あ、みっちゃんだ!」 「!?」 通路の端で突っ立っているのが怜衣乃にバレてしまった。 怜衣乃は心底嬉しそうな表情をして、アタシに駆け寄ってきた。 「みっちゃああん♪」 「や、やめなさい! もう抱き着くの禁止ぃ!!」 怜衣乃が再びアタシに抱きつき、その豊満で憎たらしい巨乳で窒息殺人未遂をしようとするのを、必死に抑えた。 けれど確実にアタシより力のある怜衣乃を押さえつける事は難しく、徐々にアタシから呼吸という行為を奪う凶器が迫ってくる。 アタシはこの場にいる一番助けを求めやすい人物に向けて、必死に叫んだ。 「か、影井先輩……っ! 助けて下さい!!」 「えっ、あ、ああ!」 アタシの懇願の声を聞いた影井先輩が慌ててこちらに駆け寄ってきてくれた。 「天佳、菜季ちゃんに抱き着きたいのは分かるけど、どうやらあっちにはトラウマみたいだからやめとけ」 「ぶーぶー」 影井先輩に宥められた怜衣乃は唇を尖らせて不満の声を上げているが、アタシに抱き着こうとするのはやめてくれた。 ……はぁ、命拾いしたわ。 「影井君って、菜季さんと仲良いんだね」 影井先輩と一緒に駆け寄ってきていた友梨先輩が意外そうに呟いた。 「まぁ大輝とは1年半くらい一緒にいるわけだしな。菜季ちゃんも知り合う機会もある」 それに対し影井先輩は懐かしむような表情をしながら答えた。 影井先輩と初めて会った時、ね。 あの時はまだ大輝が、今くらいに吹っ切れてなかったのよね……。 『あの事』に。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加