女帝の実力

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「続いて都市外選抜サイドからはぁ~! 学園内だけでなく地域大会すら毎度の如く優勝を掻っ攫ってしまう、通称『必勝の王(マルシアス・キング)』! 襟澤(えりさわ)渡琉(わたる)っ!」 光葉が自分の決闘台に立った頃に、アナウンスが相手の名前を叫んだ。 プロフィールを聞く限り、選りすぐりのメンバーの中でも特に実力が抜きんでているようだ。 『雰囲気が出来ている。相当やるぞ、あの男』 「ああ、だよな」 アックスもそれを感じ取ったようだ。 珍しく少し興奮しているようにも見えた。 久しぶりの光葉の決闘を生で見れるからだろうか。 俺も、それでちょっとテンション上がってるしな。 そんな事を思いつつ、俺は相棒と共に幼馴染みの久しぶりの雄姿を楽しく観戦することにした。 「今日は、運が良い」 互いに決闘の準備として手札をシールドを揃えている時に、襟澤とかいう対戦相手が唐突に喋った。 「菜季光葉、俺は今日という祭典が決まってから君の事を要チェックしていたのさ。対戦してみたいと思っていたら、この対戦カードだ」 「へぇ、目の付け所が良いじゃない」 一応褒められているので、光葉は軽く褒め返した。 俺はほんの少しイラッとする。 「最年少『選出決闘者』という実力もさることながら、他のメンバーにはない華というものが君にはある」 決闘都市内ランキングで10位以内の学生が総称される『選出決闘者』を知ってるとは、確かにきちんと調べられているな。 ……いやそんな事よりも、「華がある」という言葉に俺は少し嫌な予感がしている。 光葉は先の言葉を想像して、ちょっと辟易としている様に見える。 「ズバリ言おう── 菜季光葉。俺は君を貰うっ!!」 襟澤の言葉がマイクを通じて会場内に大きく響き渡ると、会場内は一瞬だけだが完全な静寂となった。 だがすぐに黄色い声(ほぼ女性)によって、耳に大打撃を受ける程度の声量に包まれた。 「きゃーー! 今のって告白だよね!」 「ここでしちゃうなんて、何て大胆!」 「いいなぁ! あたしもあんな積極的な告白されたいっ!」 「我が天使、光葉様を都市外の男が……コロス……」 一部、恐ろしい声が消えたが……そこは気にしないようにしよう。 そこまでは行かないとはいえ、俺もかなり面白くないわけで。
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