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「決まったーーーーー!!! 圧倒的不利なデッキ相性と、それにより生まれた絶望的状況から、菜季光葉選手が見事大逆転っ!!」
決闘の決着がつき、立体映像が消えて行くのと同時に、司会者が司会席から身を乗り出すように前のめりになりながら、大絶叫する。
それの直後、割れんばかりの歓声が会場に鳴り響いた。
光葉はそんな中を、特に感慨をせずにいつも通りの表情で決闘台から離れる。
すぐにこちらに戻って来てくれると分かっていても、俺は我慢出来ずに選手待機席から立ち上がって駆け出した。
「光葉っ! すっげぇ決闘だったぜ!!」
「ひ、大輝!」
光葉の両手を掴んで讃えの言葉を掛けると、彼女は顔を赤くした。
だが、興奮しきってる俺は全くそれを気にしない。
俺は光葉の手を取り、上下に激しく振る。
「おっとぉ? 海堂大輝選手、菜季光葉選手と何やら親しげな様子だ! 見せつけてくれるねえっ!」
「あっ」
だが司会者の言葉が会場に響き渡るのが聞こえ、俺は自分のしている行為が如何に思いきっていたのかに気付いた。
「わ、悪いっ」
「……ば、馬鹿」
掴んでた手を放すと、光葉は目を逸らしながら呟いたのが聞こえた。
その後、二人して顔を伏せながら控え席へと戻ったわけだが……
最中、司会者と一部の観客が黄色い声援を上げられたのは言うまでもない。
───当然、俺に対しての突き刺さる言葉を浴びせられたのも言うまでもない。
「お姉様が……あんま馬の骨に……! 偶然で勝てただけなのに、調子に乗り過ぎですわっ!!」
そして観客の中で一人、聖ルチークの制服を着た少女が拳を強く握り締めながら呻いたのに、俺たちはまだ知らずにいたのだった───。
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