父の影と未知の力

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俺と光葉がアックスの返答に驚いていると、今度は怜衣乃が提案をしてきた。 「じゃあさ、行きたい人だけがヒロっちに着いてくってのはどう? これなら本人が自己責任で危険を承知したってことになるでしょ」 いつも通りの軽い口調で言ったかと思えば、ガラリと表情を変えて怜衣乃にしては珍しい真剣な顔つきになった。 「あたしもね、気になるの。その真相ってやつ。だからヒロっちに着いてく」 ちゃんと覚悟はできているらしい。 なら、俺が拒否すべきじゃないな、と俺は結論して怜衣乃に頷きを返した。 すると光葉が痺れを切らしたかのように、両手を掲げて大声を上げた。 「あーもぉ!! しょうがないわねぇ、分かったわよ! でも条件として、アタシも一緒に行くからねっ!!」 「光葉……」 腕を組んで怒るように条件を突き付けてきた光葉。 やっぱり優しい子なんだよな、光葉は。 「ツキっちとユリっちはどうする? 無理強いはしないからね。あたしたちがもし戻って来なかった時に救援を呼ぶのだってちゃんとした役割なんだし」 怜衣乃は相変わらずらしくない真面目な眼差しで2人を見つめる。 雰囲気に呑まれてただ着いてくるのは認めない、と暗に言ってるように見えた。 二人の内、まず口を開いたは夏騎だった。 「行くよ、一緒に。俺だって気にならないわけじゃないし、親友だけを危険なトコに送ってけないからな」 そう言って歯を見せて笑った夏騎は、何だか頼れる強さみたいなものを感じられた。 そして、夏騎の言葉でやっと決心できたのか小鶴も慌てて喋り始める。 「わ、私も着いて行きたい! 影井君と同じ、怜衣乃ちゃんや光葉ちゃんだけ危険な所には行かせたくないから! もっ、もちろん海堂も!!」 いつもは真面目でちょっと気弱な雰囲気がする小鶴だけど、今は自分の意志をちゃんと持てている。 俺にはそれが伝わってきた。 どうやら怜衣乃も同様に感じたようで、 「じゃ、みんなで第16区域にゴーだね!」 普段通りの明るい怜衣乃に戻って、先導を切り始めた。
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