父の影と未知の力

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第16区域。 ここは言わば「旧開発地域」といった場所で、指定された旧決闘アリーナ以外にも閉鎖され使われなくなってしまった施設が沢山点在する。 言い忘れていたが、俺たちの学校や寮がある場所は第12区域だ。学園とそれに関連した施設が密集している。 区域と区域の行き来は、勿論徒歩でも可能だが今回は指定された時間に然程余裕がないこともあり、公共機関を利用した。 「うっわー、何か雰囲気出てるねー」 「こんな人気がなさそうなところを指定してるのよね。みんな、気を抜いちゃダメよ」 バスを降りると、怜衣乃はキョロキョロしながら呑気に呟き、逆に光葉が眉を釣り上げながら警戒を促した。 夏騎と小鶴、そして俺も光葉ほどじゃないけど警戒を忘れず歩いた。 徒歩で第16区域内を進むと、10分程で目的地である旧決闘アリーナと思われる建築物が見えてきた。 思われる、と曖昧な表現をしたのは携帯電話で検索して出てきた旧決闘アリーナの画像は廃れる前、現役だった頃のものだったからだ。 ドーム型の屋根の3分の1ほどが欠損していて、シャープなイメージが台無しになってるし、 窓ガラスは8割ほどが割れているかヒビが入っている。 そして当然ながら、「立ち入り禁止」と書かれたプレートが紐によって吊るされており、入口を横一線に結んでいた。 「これ、本当に入って大丈夫なのかな……?」 「ま、普通にダメだろうな」 真面目な小鶴が不安そうに呟き、夏騎が苦笑しながら受け答えした。 確かに、侵入したことが決闘都市にバレるとちょっとマズそうだが、 ここまで来たんだ。腹を括ろう。 「行こう」 「……ええ」 俺が眉を潜めて力強く言うと、光葉がまず頷いてくれた。 他の3人も頷き、5人同時に旧決闘アリーナの入口、寂れたガラス扉へと向かった。 元は自動扉だけど今は電気が通ってないから、近付いても動かない。 でも俺を呼び出したやつの好意か、人一人が通るくらいのスペースは開かれていた。 なので俺たちは順番に、その隙間を通って建物内へと入っていくのだった。
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