父の影と未知の力

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《ガイギンガ》が左手に持つ銀河模様の剣を突き出し、俺に向かって突っ込んでくる。 ここは決闘空間。精霊が実体を持てる空間……。 つまりあれをマトモに喰らえば、無事じゃいられない。 でもさっき《デビル・ディアボロス》が攻撃してきた時のビームはプレイヤーには届かないようにバリアーで守られた。 でもそれでも刃物が迫って来るんだから怖いもんは怖い。 そう恐怖した、次の瞬間だった。 「決闘空間、終了」 フードの男がそう宣言すると、俺たちが居た宇宙のような空間が一気に薄らいで行った。 それと同時に俺の目の前まで迫っていた《ガイギンガ》も実体が薄らぐ。 「ぐっ!」 《ガイギンガ》が俺を通り抜ける。 ほぼ消えかかっていたからか直接傷を負わなかったが、俺は無意識に声を出した。 そして数瞬後に決闘空間が完全に消滅し、元の旧決闘アリーナへと視界が戻った。 「……助かった、のか」 緊張が解け、片膝をつく格好にはなりながら呟く。 対してフードの男は決闘空間終了と同時にまとめられた自分のデッキを床から拾いつつ言ってきた。 「精霊が実体化していても、トドメのダイレクトアタックでプレイヤーが直接被害に遭うことはありません。しかし、真の決闘による敗北には重大なペナルティーが存在します。なので今回は真の決闘での決着はしないでおきました」 ケースにデッキをしまいながら、フードの男は説明する。 話す言葉は丁寧だが、俺に向ける眼は蔑みを強く出していた。 「我が主の命は海堂大輝様の『力』が脅威に値するか量ること。ですが、その必要はありませんでしたね。貴方の力は恐れるほどのものでもない」 そう語りつつ、背中を向ける男。 我が主って誰の事なのか、そしてあるドラグハートが何なのか、色々疑問があったけど、 俺の頭の中は一つのことで一杯だった。 「待て……っ! 親父は……親父のことは……」 衝撃を受けたダメージが抜ききれない俺は、何とか言葉を紡ぎだし男に向けて手を伸ばすが、 「残念でしょうが負けてしまった以上、貴方がそれを知ることは永遠にないでしょう」 フードの男が背中を向けたまま言い放つと、 俺とヤツの間にシャッターが勢いよく落ちてきた。 大きな衝突音が鳴り響き、完全にフードの男が見えなくなってしまった。
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