語られる過去の棘

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それから20分程度の時間が経過し、みんなの頼んだ品が届き渡った。 つっても俺や夏騎は、メニュー表にずらりと並ぶ紅茶の種類一覧を見ても何も分かんなかったので、女子たちに多少聞きつつ無難なのを頼んどいた。 というか怜衣乃や小鶴も紅茶に詳しいのか。ダージリン辺りしか聞いたことない(しかも意味は分からない)俺たちが異端に思えてしまった。 「よし、じゃあそろそろ話してもらっていいか?」 一番に光葉がカップに口を付けようとしてたタイミングで、夏騎が口を開いた。 その表情はいつもと違い、強い目力を放っていた。 「大輝、お前の父親のことについて……聞かせてくれ」 「……っ」 夏騎が父親のことに触れた瞬間、身体が一回だけ震えた。 だが最近は何度も耳にしたお陰か、今はこれまでの様な酷い動機は起こらなかった。 「話せる? 大輝。無理なら、アタシが話すけど」 「いや……平気だ。今なら、話せる気がする」 光葉が心配そうにこっちを見たけど、俺は首を横に振って覚悟を決めた。 よく見れば夏騎だけでなく、怜衣乃や小鶴も知りたそうに俺をじっと見ていた。 「あいつも言ってた通り、俺の父親はIO。無敗の決闘チャンピオンだった」 そして俺は目を閉じ、今まで思い出したくなかった記憶を掘り起こし始めた──。
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