語られる過去の棘

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さっきの返事で疑問の一つは解消されたようだが、それは新たな疑問を生むこととなった。 次に投げかけてきたのは小鶴だ。 「あの、前から思ってたんだけど……。海堂と光葉ちゃんはどういう経緯で幼馴染み、なの?」 あーそれか。 その疑問は、昔に初めて夏騎が光葉に会った時にも聞かれたことがあった。 あの時はハッキリと答えられず、はぐらかしたんだが……。 今なら言える。親父のことを知った3人なら。 「さっきも実感してくれたと思うけど、光葉ってお嬢様なんだよな。菜季家って結構デカい会社を運営しててさ。で、その会社って親父のスポンサーをやってるんだ。なんでも光葉の親父さんと俺の親父って学生時代からの仲らしくて、その経緯でな」 俺が覚えてる最過去の記憶、まだ幼稚園にすら入る前だが俺と光葉は既に一緒に遊んでいた。 つまり物心つく前からの顔見知りってことだ。 「なるほどなぁ……。菜季ちゃんの親父さんが経営する会社がIOのスポンサーだったわけか。ようやく二人の関係の秘密が分かってスッキリしたぜ」 説明を聞き終えた夏騎が長年の疑問が解消されて、大満足の表情をしていた。 俺も、ようやく夏騎に話せて良かったと思えた。 多分ここで話を終わらせても、3人は文句を言わないだろうな。 親父でIOであり、光葉との接点も説明できたから。 ──だが、この先のこともちゃんと話しておくべきだ。 話せそうな今という機会を逃したくはない。 俺は意を決して、続きを口にし始めた。 「俺にとって憧れで自慢の父親だったけれど、みんなも知ってる通り、3年前に親父は突然姿を消したんだ」
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