語られる過去の棘

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(第三者視点) 「……」 旧決闘ドームでの決闘を終えたフードの男は、暗く湿気が強い通路を歩いていた。 カツン、カツンと彼の足音だけが空間に響き渡る。 数分歩いたフードの男の前に、大きな鉄扉が見えてきた。 到底、人間の腕力では開かなそうな扉だが、フードの男は迷わず扉の目の前まで歩み寄った。 すると鉄扉がゆっくりだが何の力も介せず、自然と開いて行った。 フードの男はそれを疑問に思わず、通って行った。 「只今戻りました。我が主」 空調管理がされているのか、湿気が取り除かれた部屋に入ったフードの男は片膝を付いた。 その視線の先には、豪華に装飾がされた玉座のような椅子に座る一人の男が居た。 「早かったな」 「主による直の命令とあれば、当然です」 玉座の男に声を掛けられたフードの男は、より頭を下げて忠誠を誓った。 それを見て玉座の男が満足そうな笑みを浮かべた。 だが逆にフードの男は納得のいかなさそうな表情を浮かべた。 「私は主の命で海堂大輝の保有する『力』の確認に向かいました。……故にこれだけはハッキリ言わせて頂きたい。彼は主が気に掛けるほどの人物ではありません」 傅きながら述べた男の言葉を聞いた、玉座の男は──苛立ちを顕わにして睨みつけた。 「ほぉ……此方の考えに異を唱えようというのか」
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