語られる過去の棘

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「いっ、いえ! そんなつもりは御座いませんっ! 私はあくまで、海堂大輝ごときに主が手を煩わせる必要がないことをお知らせしたく……」 フードの男は慌てて立ち上がり、訂正を口にする。 その表情には意見が間違って伝わったことへの焦りとは違う、絶望と恐怖で完全に覆われたものだった。 「貴様が指図することではない。これ以上の言動は反逆とみなす」 玉座の男のその口調は酷く冷めたようであり、フードの男は魂を握られて今にも潰されそうな感覚を味わった。 「……」 結果、もう何も言えなくなってしまう。 玉座の男はそれを見て、つまらなそうに嘆息した。 「もういい。しばしの間、休息を取れ」 「…………はっ」 フードの男は玉座の男の命令に頷くと、体を反転させ開いたままままの鉄製の扉から出て行った。 再び静まり返る空間。 玉座の男は独りでに呟いた。 「つまらん」 そう言った直後、男は何故か含み笑いを始めた。 「クックック……だが貴様はこの程度で終わらないであろう? なあ、海堂大輝っ!」
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