希薄の捜索

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「親父!! 光葉を放してくれ!」 俺は決闘空間で気絶した光葉の右腕を掴んで対峙している、ガタイの良い男に向けて叫ぶ。 オールバックの黒髪の上に幾何学模様の柄のヘッドバンドを付けた40代程の男。 見間違えるワケがない、親父の氷薙だ。 だが親父が光葉を解放する気配はなく、大きく口を開けて笑いながら言い返してきた。 「大輝。残念だが、俺とお前は闘うしかないのさ。さあ、デッキを構えろ大輝!!」 楽しそうに叫ぶ親父の姿を見て、俺は何だか悲しくなった。 ……違う。 俺の知ってる親父は、こんなんじゃない!! 『大輝、もう諦めろ。目の前に立つ男は、もう氷薙じゃない』 隣に立つアックスが告げてくる。 氷薙じゃない……? 何言ってんだよアックス。 どう見ても親父だろ!? 10年間負けずに玉座を守り続けた……最強の決闘者。 そんな奴と、決闘しろってのかよ!!? 俺は怖気づき、腰のデッキホルスターに入れてあるデッキを取り出すことが出来ない。 それを見た親父が苛立ちながら、俺を睨みつけてくる。 「おいおい大輝。念願の俺との決闘だってのに、出来ないのか? ……光葉ちゃんがどうなってもいいのかぁ!?」 再び叫んだ親父は、光葉をもう少し持ち上げると……その首筋を舌で舐めた。 舐められた光葉がピクリと反応する。 それを見た俺は……頭の中で何かがキレた。 「親父いいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!」
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