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夕暮れ時、5時を知らせる金が鳴り響く。
静寂に満たされていた俺の部屋にも、当然それは聞こえてきた。
それまでは、まるで時が止まっていたかのようだったが、そこでようやく光葉が立ち上がった。
「……そろそろ戻らないと。今日は門限が少し早いから」
何も答えない俺にそう告げると、自分のバッグを肩に掛けて足早に玄関へと向かっていった。
そのまま黙って出ていくと思ったのだが、光葉は最後、ドアノブに手を掛けた時にボソッと呟いてきた。
「……何も今すぐじゃなくて良いの。少しずつでいいから……頑張ってよ、大輝」
「……あ」
それを聞いて、やっぱり「じゃあな」くらいは言おうかなと思って顔を上げたのだが、
その瞬間、扉が閉まる音が聞こえて、光葉は部屋から立ち去っていた。
『……で、どうするんだ?』
そんな時、背後にいたアックスがいきなり聞いてきた。
何が? と一瞬疑問に思ったが、決闘騎士団のことだとスグに理解できた。
「……まだ分かんねぇ」
俺はまだ決めることが出来なかった。
だから、言葉を濁す事しか出来なかった。
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