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「……どうしたの、大輝?」
共通の登校路の途中、光葉が俺の顔を覗き込むようにして顔を近付けてきた。
「いっ、いや、何でもないから!」
心境を悟られたくないのと恥ずかしさから、俺は顔を熱くしながら光葉を必死に遠ざけた。
光葉は「?」と言いたげな表情をして(可愛い)、顔の位置を戻した。
俺はこの空気を変えようと、何とか話題を探った。
「あ、そうそう! 昨日、俺のクラスに転校生が来てさ、見た目が完全な外国人なのに名前が日本人で、日本語しか喋れないって変なヤツでさー」
「ふーん」
俺は夢中になって話すんだけど、関わりのない光葉は素っ気ない感じだ。
「そいつと決闘したんだけどさ、何か気が合うんだよな。女子なんだけど、ちょっと男の子っぽい所があるからかもしんないけどさ」
「!? ちょっ、ちょっと待って!」
だが言葉を続けた瞬間、光葉の反応がガラッと変わった。
な、何だ……?
「あ、アンタんのトコに来た転校生って、女なの!? 「気が合う」ってどういう意味っ!?」
血相を変えて必死にそんな事を聞いてくる光葉。
そ、そんな変な事言ったか俺……?
光葉の急激な態度の変化に俺はたじたじだった。
『……安心しろ、光葉。お前が心配するような事態にはなってない』
だがそんな時、横から助け船とも言える声が聞こえてきた。
言わずもがな、アックスだ。
「なっ、ア、アックス!!? ち、違うわよっ! アタシはそんなの全く気にしてなんか……」
アックスの言葉に大きく取り乱す光葉は最後はすぼむようにして、顔を伏せてしまった。
助け船には助け船だったんだけど、光葉を辱めたような状況になってしまい、俺はちょっと困る結果となった。
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