五章

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「…ん…櫂…翔…」 微かに残る理性で櫂翔を呼ぶ。 「ん?」 「…ハァ…学校…」 そう言えば、抱き起こしてくれた。 「…仕方ないな。」 そう言いながらギュウと抱きしめられた。 「…もう…。…毎朝…毎朝…。」 寝起きの櫂翔に苦労する私は呟いた。 「李遠が可愛く起こすからだろ。」 「普通に起こしてるだけでしょ?」 そう言えばクスクス笑いだした。 何を言ってもダメだと思い言った。 「もう…とにかく早く準備して?今日は歩きだから、早くしないと間に合わないよ?」 「わかったよ。」 櫂翔はそう言い立ち上がり準備を始めた。 私はその間にお弁当を作った。 パパッと簡単な物を作り終わった頃、櫂翔の準備も終わりリビングにきた。 「何してんだ?」 キッチンに立つ私に櫂翔が抱きついてきた。 「お弁当作ってた。いつも学食なのもね?」 「そうか。じゃあ今日は屋上だな。…そろそろ行くぞ?」 「うん。」 私はお弁当を袋に入れ、櫂翔と家を出た。 「李遠…手…」 そう言いながら、私に向かって手を差し出した。 何がしたいのか解らなく、キョトンとしながら櫂翔を見た。 「手だせ。」 素直に手を出せば繋がれた。 「…さすがに手を繋いでは…」 手を繋いで登校したなんて女の子達に見られてたら、何されるか解らなかったから断ろうとする。 「…嫌なのか?」 櫂翔に寂しそうに言われた。 「…うっ。嫌じゃ…ない…」 櫂翔の寂しそうな顔に負け、本心を言えば嬉しそうに微笑み歩きだした。 …仕方ない。まぁ…いいか…。 そう思いながら、櫂翔と話しながら、学校に行った。
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