五章

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ズキズキと傷む足に目を覚ました。 周りを見渡せば、見知った寝室にいた。 きっと車で寝てしまった私を櫂翔が運んでくれたんだと思った。 部屋には私しかいなく、リビングの方にも誰かいる気配はなかった。 …櫂翔はどこだろう…。 そう思いながら、ベッドから身体を起こし立ち上がろうとしたら、足の痛みに倒れた。 足の他にも身体も、所々傷み殴られていた事を思い出した。 倒れたまま考え込んでいると、寝室のドアが開き櫂翔が入ってきた。 「李遠…起きたのか。…何してんだ?」 「あ…櫂翔いた。」 「ん?」 「櫂翔がいないから探しに行こうとして、立ち上がったら倒れたの。」 「あぁ…風呂入ってた。無茶するな。」 櫂翔はそう言い、私を抱き上げベッドに降ろした。 「傷が痛むのか?」 「…少し…」 「頼むから、無茶しないでくれ。」 ギュッと抱き締めながら言われた。 「うん。ゴメンね。」 しばらく抱き締められたままいると、櫂翔は不意にチュッとキスしてきた。 「……ン………」 驚いているとまたキスされ、段々と深いキスに変わっていった。 チュッと音を立て、櫂翔の唇は離れていった。 「李遠…熱出てきたな?少し熱いぞ?キツくないか?」 「…うん。大丈夫だよ?」 自分では全然大丈夫だったから、そう答えたが、櫂翔は心配そうにしていた。 「何か食べるか?」 「…いらない」 「薬飲まなきゃダメだろ?果物なら食べれるか?」 「……うん。…ねぇ…薬…飲まなきゃ…ダメ?」 薬嫌いな私は櫂翔に聞いてみた。 「ダメ。熱も出てきたし痛むぞ?」 そう言われ渋々頷くと櫂翔が立ち上がった。 ギュッと櫂翔の服を掴むと、櫂翔は私に優しい笑みを見せてくれた。 「果物取りに行くだけだ。」 そう言われスッと手を離すと、頭を撫でられた。 「すぐ戻ってくるから。」 そう言い寝室から出て行った。
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