五章

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本当にすぐに戻ってきた櫂翔は、数種類の果物を持ってきた。 「ほら。少しでもいいから食べろ。」 そう言われブドウを手に取り口に入れた。 冷たくなった果物が気持ちよく、何個か食べていた。 「…もぅ…いらない…」 「ん。ほら薬飲め。」 そう言い薬と水を手渡された。 薬は嫌いだけど、ズキズキと痛みが治まる様子がなかった為、何とか薬を流し込んだ。 何とか飲んだけど、嫌いな薬を飲んだせいか、目に涙が溜まっていた。 「頑張ったな。ほらもう少し寝ろ。」 櫂翔は涙を拭いてくれ、私を布団の中に入れ自分も入り、私を抱き締めてくれた。 「…どこにも行かない?」 「あぁ。抱き締めててやる。」 不安になり聞いた私に、櫂翔は答えてくれた。 櫂翔の温もりに安心して、薬のせいか眠気には勝てずに眠りに落ちていった。 熱が上がっていたのか、夢を見ていた。 涼にされる夢…………。 今日の奴等が涼に見えたせいか、しばらく見ていなかった夢に涙が溢れていた。 その時、ひんやりとするオデコに目をあけた。 「…起こしたか?」 そう聞く櫂翔に首を振る。 「熱が上がってきたな。大丈夫か?」 櫂翔に頷き、ギュッと抱きついた。 「どうした?夢でも見てたのか?」 「…うん。…怖い…夢…」 「大丈夫だ。俺が側にいる。ほらまだ寝るぞ。」 そう言う櫂翔に頷き目を閉じると、すんなり眠りに落ちていった。
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