六章

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しばらく泣き続け、ようやく涙が止まった頃、櫂翔が言った。 「落ち着いたか?」 「……うん。」 「一人にして悪かった。ぐっすり寝てたから起こさずに行ったんだ。次からは連れていくから。」 「………うん。」 私が返事をすると、チュッとキスを落とされた。 「李遠、行く用意しろ。綾が待ってるぞ?」 「うん。」 櫂翔に返事をして準備を始める。 寝起きで泣いたため、瞼が腫れているのを、化粧で誤魔化しなんとか準備をおえて、リビングに戻ると、すでに準備が終ったらしい櫂翔がソファーに座っていた。 「櫂翔、お待たせ。」 「あぁ。行くか。」 そう言い右手に荷物を持ち、左手は私に差し出した。 差し出された手を握り家を出ると、いつもの車が待っていて乗り込んだ。 私達が乗るとすぐに車は動きだし、綾さん達の街に向かっていた。 「ねぇ櫂翔?」 「ん?」 「どれぐらいで着くの?」 「2時間ぐらいだな。」 「そっか。熾遠達は?」 「熾遠と銘愛はもう行ってる。まぁ、熾遠はこっちに戻るけどな。変わりに葵とメンバーの半分がいる。」 「そうなんだ。」 「あぁ。こっちも空には出来ないからな。俺は向こうに行くから、熾遠と侑哉が留守番みたいな物だ。」 チームも大変なんだって思いながら、櫂翔の話を聞いていた。 私が涼に立ち向かう事が出来たら、メンバーを半分にする必要がなかったのかも…。 そう思い聞いてみた。 「ねぇ…櫂翔?」 「どうした?」 「私が…いるから?」 「ん?」 「私が…いるから…メンバーを半分に分けたの?…私が…迷惑…かけたから…。」 「李遠…」 そう言うと、櫂翔は驚いた顔をしながらも、真剣な眼差しで私を見た。 「それは違う。魁さん所の連合も少しこっちに来てる。もともと分けるつもりだったんだ。 それに…俺が向こうに行くのは、李遠と離れたくないからだ。向こうは妃那さん達がいるけど、李遠は妃那さんと綾ぐらいしか知らないだろ?銘愛は向こうのメンバーとも仲がいいからな。熾遠が動くのが一番いいんだ。 だから…李遠のせいじゃない。」 「…うん」 櫂翔の話を聞き、頷いてから、少しメンバーに申し訳なく思いながら櫂翔に寄り添い着くのを待った。
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