六章

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朝食を食べながら、皆で他愛ない話をしていた。 「はい櫂翔。」 「いらないのか?」 「ん?食べるけど、櫂翔も食べなきゃダメだよ。だから半分こしよ?」 そう言うと、笑いながら耳元で囁かれた。 「…李遠が食べさせてくれるなら食べる。」 「えっ!?」 「クスクス。俺は食べなくてもいいけどな。」 「むぅ~。食べなきゃダメ…。倒れちゃったらヤダもん。 …はい。」 そう言い櫂翔にサンドイッチを差し出し食べさせた。 すっかり皆がいるのを忘れて、二人の世界に入ってしまっていたが、ふっと呆れた様に銘ちゃんに呟かれ周りを見渡した。 「櫂翔…李遠ちゃん…周りをみなさい。」 「…あっ…」 慌てて周りを見ると、皆がニヤニヤしながら私達を見ていた。 急に恥ずかしくなり、私は顔が真っ赤になってしまったが、櫂翔は平然と食べていた。 恥ずかしい朝食も終わり、今日は夜から忙しいとの事だから、昼の間は皆で遊んだ。 夕方になり、綾さんの実家に送り届けられた私達は家の前で、それぞれ話をしていた。 「…気を付けてね?」 「あぁ。大丈夫だ。もぅ外には出るなよ?いいな?」 「うん。」 「そんなに不安そうにするな。終わったら連絡するから、待っててくれ。」 「…うん。」 話をしていると、魁さんに呼ばれた。 『櫂翔!時間だ。』 「はい。じゃあ李遠。後でな。」 チュッと触れるだけのキスをして、櫂翔は行ってしまった。 櫂翔達が見えなくなるまで、呆然と立ち尽くしていると、綾さんに呼ばれた。 『李遠ちゃん。入ろ?櫂翔くん達は大丈夫だよ。信じて待ってよ?』 「…うん。」 『よし。あっという間に櫂翔くん達が帰ってくるよ。』 そう言う綾さんに引っ張られながら、家の中に入って行った。
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