六章

45/70
前へ
/592ページ
次へ
突然微かに震えだした私を見て、綾さんママはギュッと抱き締めてくれた。 『大丈夫…大丈夫だよ。ここなら怖くないからね? …あいつ…やっぱり酷いことしてたのね?まだあいつと暮らしてるの?』 「…あ…今は…櫂翔と…。」 『そぅ…なら大丈夫ね。ゴメンね?嫌な事思い出させて…』 「…いえ…大丈夫…です。」 綾さんママに抱き締められ、落ち着いてきた頃、綾さんが話しかけてきた。 『李遠ちゃん…大丈夫?櫂翔くん呼ぼうか?』 「大丈夫…。少し思い出しただけだから…。」 『なら良いけど…無理なら連絡するからね?』 「うん。ゴメンね綾さん。」 綾さんと話していると、男の人が近寄ってきた。 「綾。李遠は櫂翔の女か?」 『あきくん!!そうだよ。李遠ちゃん、こちらあきくん。魁のお父さんなの。櫂翔くんの叔父さんになるんだよ?』 「李遠よろしくな。櫂翔が我が儘言ってないか?」 「はい。大丈夫ですよ。寧ろ…私の方が我が儘ですし…」 「そうか。何か悪さしたらすぐ言えよ?」 そう言い、あきさんは私の頭を撫でてから潤さん達の方に行った。 綾さんママは本当のママみたいに私に構ってくれ嬉しかった。 皆でゲームをし始めた頃、携帯がなり櫂翔だと思い、確認もしないまま出た。 「はい櫂翔?」 出ても無言で相手からは何も話さない。 不思議に思い、画面を見ると非通知…と出ていた。 「…もしもし?…誰?」 ざわざわした室内も私の一言でピタッと静かになった。 「……誰なの?」 しばらく待っても返事がなく、イライラして強めに怒鳴ると、聞きたくない声が聞こえてきた。
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1836人が本棚に入れています
本棚に追加