六章

48/70
前へ
/592ページ
次へ
涙が止まった頃、コンコンっと遠慮がちに音が響いた。 「どうぞ?」 櫂翔が返事をすると、男の人が入ってきた。 とっさに櫂翔にしがみつき、男の人を見れば、潤さん達と一緒に飲んでた人だった。 「李遠は起きたか?」 「はい。さっき起きました。」 「李遠、大丈夫か?」 急に聞かれ、何の事か解らなかったが、とりあえず頷いた。 ビクビクする私に気付いた櫂翔が、ちゃんと紹介してくれる。 「李遠、この人は蒼斗さんだ。弘人さんの先輩で、宝龍の先代。ちなみに医者だ。 お前を落ち着かせたのはこの人だ。」 櫂翔にそう言われ、改めて顔を見ながら頭を下げた。 「反応まで李維にそっくりだな。人見知りは李維に似たな。 李遠、気分は悪くないか?」 「…はい。」 「そうか。落ち着かせるのに、睡眠剤を打ったからな。 あんな症状は良くなるのか?」 そう聞かれ違うと首を降ろうとする前に櫂翔が答えた。 「涼が絡んだ時だけですね。あいつの名前を聞いただけで、パニック状態になります。」 「…そうか…。安定剤置いとくから、不安なら飲ませろ。 李遠、無理はするなよ?李維にそっくりなら、たぶん性格も李維みたいなんだろ?李維も昔我慢しすぎてたしな。じゃあな。」 そう言うと蒼斗さんは部屋から出ていった。 「李遠飲むか?」 「…大丈夫。」 「クス。薬が嫌なだけだろ?必要と感じたら、無理矢理にでも飲ませるからな?」 「…大丈夫だもん。…櫂翔が居てくれれば…」 「解った。どうする?まだ寝てるか?綾達は下にいるぞ?」 「妃那ねぇに会いたい…」 「ん。じゃあ行くか。」 櫂翔はそう言うと、手を引いて立ち上がらせてくれ、二人でリビングに向かった。
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1836人が本棚に入れています
本棚に追加