1838人が本棚に入れています
本棚に追加
数回目のコールで電話に出た李遠。
〈もしもし?櫂翔、終わったの?〉
「あぁ。終わったには終わったんだが…」
〈どうしたの?〉
「食事に誘われた。断れそうにないから、今日はメシいらねぇや。」
〈…そっか。仕方ないね…。〉
「ゴメンな李遠?」
〈ううん。気にしないで。〉
「まだ可憐といるのか?」
〈うん。可憐さんと銘ちゃんと麻斗さんと疾風さんと一緒だよ。〉
「そうか。…李遠、可憐にかわってくれるか?」
〈うん。…可憐さん、櫂翔がかわってって。〉
李遠の声が遠ざかると可憐が電話に出た。
〈はいはい何?〉
「可憐か?」
〈うん。〉
「わりぃな。李遠を夜メシ食いに連れてってくれねぇか?たぶん一人だとメシ食わねぇから…」
〈あ~なるほど。うん。いいわよ。〉
「わりぃな。危ない所には連れていくなよ?」
〈はいはい。〉
可憐は返事をすると、李遠にかわった。
〈櫂翔?〉
「あぁ。夜は可憐とメシ食え。お前、一人だと食べないだろ?」
〈え?…まぁ…〉
「可憐に今頼んだから、メシ食ってから家に帰ってろ。また帰る時に連絡するから。」
〈うん。わかった。…ちゃんと…帰ってくるよね?〉
「あぁ。ちゃんと帰るから待ってろ。」
〈うん。わかった。〉
「じゃあな。」
そう言って電話を切り、ちょうど着いた料亭に足を踏み入れた。
個室に案内され中に入ると、若い女が二人と取引先のオヤジがいた。
「早かったですね。ご紹介します。家の娘です。右が長女の莉那(りな)左が次女の有那(ゆな)です。」
そう言うオヤジの隣で、照れたようにお辞儀をする娘たち。
一応、熾遠と頭を下げてから席に着いた。
「いやぁ。獅童さんと結城さんにお似合いかと思い連れてきたんですよ。」
自慢気に言うオヤジに苛つきながらも顔には出さずにやんわり断りを入れる。
「素敵なお嬢さん達ですね。折角ですが、二人とも彼女がいますので…」
熾遠がやんわり断るがめげないオヤジ。
「まぁ、この場で仲良くなれば、将来会社の為ですよ。わはは。」
曲者のオヤジに解らないように溜め息をつくと、娘たちは馴れ馴れしく俺達の隣に座り話しかけてきた。
最初のコメントを投稿しよう!