八章

11/47
前へ
/592ページ
次へ
学校から30分くらい走った頃、大きな家の前に櫂翔はバイクを止めた。 「着いたぞ李遠。」 そう言われバイクから降りて、家を見上げた。 「うわぁ…おっきい…」 「クスクス。中に行くぞ。」 私の肩を抱きながら、櫂翔は玄関に向かった。 ガチャっと玄関を開けると、リビングらしき場所から声が聞こえた。 「誰~?」 櫂翔は何も言わずに上がるから、小さくお邪魔しますって言ってから上がった。 返事がないのに不審に思ったのか、リビングの扉が開いた。 出てきたのは可憐さんだった。 「なんだ…櫂翔か…。って李遠!?いらっしゃい!お母さん!李遠が来たわよ!!」 ハイテンションで騒ぐ可憐さんに驚きながらも挨拶した。 「お久し振りです可憐さん。この前はありがとうございました。」 「いいのよ~。気にしないで。」 そう話していると、バタバタと廊下を走る音が聞こえて、可愛らしい人が抱き着いてきた。 「…え?」 「可愛い~!!櫂翔には勿体無いぐらいだわ。」 いきなりでオロオロしながら櫂翔を見ると、ため息をつきながら言った。 「お袋…離してやれ。李遠が驚いてんぞ。」 「あっごめんね?始めまして李遠ちゃん。櫂翔達の母です。」 「あ…始めまして…」 「クスクス。そんなに緊張しないで?それに…まったく始めてでもないのよ?」 「…え?」 「翼くんと李維の娘でしょ?」 「はい。」 「翼くんと李維の葬式の日…潤さん達と一緒に私達もいたの。彰さんからも聞いてたし…」 「やっぱり…パパ達を知ってるんですね?」 「えぇ。李維とは幼馴染みで親友よ。あなた達があのバカに引き取られた後に、何回か会おうとしたんだけど、あのバカが会わせてくれなかったの。あのバカに酷い事されてたんでしょ?助けてあげれなくてゴメンね?」 そこまで聞くとポロポロと涙が溢れてきた。 …皆…パパ達を覚えていてくれて、私達が叔父さんにされた事を怒ってくれる。 嬉しくなり涙が止まらず泣いていると、櫂翔に抱き寄せられた。 暫く泣いていると玄関が開く音が聞こえた。
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1838人が本棚に入れています
本棚に追加