八章

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一度家に帰って着替えてから、それぞれバイクに乗り、大きな会社の前に来た。 「…ここ…どこ?」 実家に行くとばかり思っていた私は不思議に思い聞いた。 「獅童グループの本社だ。」 熾遠が答えてくれて、謎が解けた。 「あ…だから櫂翔、髪の色変えたの?」 「あぁ。ここに来る時はな。」 「…あれ?風間さんにはそのまま会って良かったの?」 「別にいいだろ。アイツと取引してる訳じゃねぇしな。」 「そっか。」 櫂翔の話に納得して、皆で中に入った。 広いロビーに綺麗な受付があり、熾遠はそこに向かって行き、少し会話をしてから戻ってきた。 「行くぞ。社長室にいるってよ。」 そう言う熾遠に着いていき、エレベーターに乗り最上階まで来た。 社長室と書かれたプレートのドアをノックすると、中から返事があった。 その声と同時に熾遠が扉を開けて中に入る。 「親父。」 「おぅ熾遠。おっ櫂翔と李遠も一緒か。どうした?」 櫂翔のお父さんは驚いた様な驚いてない様な感じで言った。 秘書みたいな人がいたから、私は櫂翔の腕にギュッと掴まっていた。 そんな私にお父さんは気づき、秘書の人に何かを言うと、秘書の人は部屋から出ていった。 「クスクス。李遠は本当に李維そっくりだな。」 お父さんはそう言いながら私達に近づき、私の頭を撫でてくれた。 「…お父さん…。」 「おぅ。お前も父さんって呼んでくれんのか?」 「えっと…ダメ…ですか?」 「いんや。大歓迎だ。熾遠に呼ばれるより嬉しいな。李遠おいで。」 お父さんと呼ぶ事を許してくれて嬉しくなり、ニコニコしながらお父さんの隣に座った。 ちょうどその時、秘書の人がお茶とケーキを運んできて私達の前に置いた。
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