九章

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転んだ風間さんは私を睨みながら叫んだ。 「何するのよ!!」 「別に…ネットが手に絡み付いてたのに気付かなかっただけ。それに…妨害ありの競技なんだから、文句言えないよね?じゃあお先に。」 言い返して反論される前に走り出しゴールを目指した。 他の女の子達が先に行っていたが、うまい具合にボールを転がしてよろけた隙にトップにたち、そのままゴールした。 一着でゴールをした後、暫くすると女の子達が次々にゴールして、その後に葵が来た。 「い~ちゃん大丈夫?」 「うん、大丈夫。少し擦りむいただけだから。」 「あ~本当だ。櫂翔さんが心配するから、手当てしてから戻ろうね。」 「うん。心配してくれてありがとう。」 手を踏まれていた事に気付いてない葵に、怪我がバレないように隠しながら話していた。 最後の組が終わるまで待ち、退場になると葵と共に救護テントに向かって膝の手当てをして貰い、手当てが終わってから櫂翔達の元に戻ると、熾遠が心配そうに聞いてきた。 「李遠、転けた所は大丈夫か?」 「うん。大丈夫だよ。」 「手当てしてきたのか。他には怪我してねぇか?」 「大丈夫。」 熾遠に返事をしながら櫂翔の隣に座り、置いてあったタオルで手を隠した。 手の怪我もバレる事なく、櫂翔達がいつ出番なのか聞くと、昼かららしく話している内に午前中最後の種目が終わり、お昼の時間になり気になっていた事を聞いてみる。 「ねぇ櫂翔?お母さん達来てるかな?」 「あぁ。あっちにいる。行くぞ。」 私と櫂翔と熾遠はお母さん達がいるらしいテントに向かって歩いていた。 女の子達の奇声がついてきたが、櫂翔も熾遠も気にしている様子はなく無視して私に話し掛けていた。
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