九章

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テントに着くと、皆が勢揃いしていた。 「李遠ちゃん。頑張ってたわね。」 「よくやったな李遠。」 「お父さん、お母さん!見ててくれたの?」 「もちろん!1位なんて凄いじゃない!!」 「ありがとう。」 お父さんに頭を撫でられたから嬉しくなりニコニコしながら櫂翔の隣に腰を卸した。 「さぁ、たくさん食べてね?」 お母さんはそう言いながら重箱を取りだし開ける。 「うわぁ。すごぉい。」 中身に驚いていると銘ちゃんもタッパを取り出していた。 「李遠ちゃん、レモンの砂糖つけもあるよ。プリンも作ってきたよ。」 「うわぁ…ありがとう銘ちゃん、お母さん。」 作ってくれた事にお礼を言い、手に怪我をしている事を忘れてお弁当に手を伸ばした。 怪我したのは左手だったが、右手に箸を持ち、銘ちゃんから左手でお皿を受け取ってしまい、皆の視線が私の手に集中していた。 お弁当に夢中になっていた私は皆が私を見ている事に気付かず、美味しそうな唐揚げにかぶり付いていると櫂翔に呼ばれた。 「…李遠?」 「ふぁに?」 「…その手…どうした?」 「…??…………あっ!!」 一瞬何の事か解らず、キョトンとしながら口に入れた唐揚げを食べていて、ちょうど飲み込んだ頃思い出し慌てて隠した。 答えない私から櫂翔はお皿と箸を取り上げて、左手をマジマジと見ている。 「えっと…。」 「櫂翔、とりあえず治療が先だ。李遠ちゃん、傷は洗った?」 弘人さんが助け船を出してくれたが、傷を隠していたから洗ってもいないので首を振ると、櫂翔は私の手を引き立ち上がって水道に向かった。
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