九章

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ハラハラしながら櫂翔を見ると、熾遠達と何かを話していて、熾遠、侑哉さん、葵は頷くとそれぞれ敵チームに向かって走り出した。 櫂翔は最初にいた場所に戻っていっている。 祥くんは逃げる総司くんを追いかけ回し、お父さん達のテントからは笑い声が聞こえた。 「え~れ~な~の~為に~!逃げ切って~見せるからなぁ~!」 走りながら叫ぶ総司くんが可笑しくて笑っていると、パンっと音がして“終了です”と先生の声がした。 「あれ?」 いつの間にか終わってしまった競技にキョトンとしているとエナが説明してくれた。 「…李遠…何見てたの?」 「え?祥くんと総司くんの鬼ごっこ。」 「はぁ…総はいいから櫂翔さん見てなさいよ…。簡単に言うと、しぃ兄達が敵チームの大将のハチマキを取って終わり。」 「あぁ!なるほど!!」 櫂翔の作戦に感心しながら、blue moonのテントに戻ると、既に櫂翔達も戻って来ていた。 「お疲れ様、櫂翔。」 「あぁ。」 櫂翔の隣に座りながら声をかけると、熾遠が言った。 「李遠…ちゃんと見てたか?」 「うん。最後は見流しちゃったけど…」 「見てなかったのかよ…。」 「ごめんね熾遠?祥くんと総司くんの鬼ごっこが面白くて…。」 そう言うと櫂翔も見てたらしく、クスクスと笑っている。 「総司もバカだよな?祥麻さんと本気でヤっても勝てるか解んないんだから、終わらせちまった方が早いのに逃げるから追いかけられるんだ。なぁ櫂翔?」 熾遠はそう言いながら櫂翔を見た。
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