九章

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泣きながら言うエナを総司くんが支えた。 「エナ…泣かないで…。…言えなくて…ごめん…。」 エナの優しさに私まで涙が溢れた。 そんな私を支えながら櫂翔は風間姉妹を見据えていた。 熾遠が私達の前に立ち、風間姉妹に言う。 「…よくも…李遠とエナを泣かせたな…。…忠告はしてたはずだ。お前らの会社との契約を切らせて貰う。今すぐ俺達の前から消えろ。」 そう言う熾遠に風間姉妹は顔面蒼白になっていた。 「あ…あの…熾遠さん…」 「あ゙?気安く呼ぶなや。」 熾遠がキレ気味に言うと、今度は総司くんが話し出した。 「家も確か風間グループと取り引きがあったな。家も切らせて貰う。」 「そんな…総司さんまで…。櫂翔さんも熾遠さんも総司さんも、その女達に騙されてるんですよ!!」 総司さんの言葉に風間姉が叫ぶ。 その叫びを聞いた櫂翔、熾遠、総司くんの顔付きが変わった。 「まだ言うのか…。てめぇらがそんなに言う李遠は俺の妹だ。てめぇら…殺されてぇのか。」 「熾遠、落ち着け…。」 妹と聞いた風間姉妹は震えだした。 「さっさと消えろ。これ以上、俺達を怒らせるな。」 私を抱いたまま、櫂翔は低い声で言う。 それを聞いた風間姉妹は震えながら私達の前から走り去った。 風間さん達が居なくなってから、暫くして私はやっと涙が止まった。 エナの方を見ても、エナも涙が止まったみたいだ。 フッとエナと目が合い、二人で笑った。
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