十章

5/39
前へ
/592ページ
次へ
途中、いろいろな所に寄り道をして、お昼前には綾さん達の学校についた。 学祭ムードの入口にバイクを近付けると、皆の注目を浴びた。 視線にビックリして、櫂翔の服をギュッとつかんでいると、頭を撫でられそのままバイクを降りた。 櫂翔はバイクがたくさん止まっている所に向かい、バイクを止めて私の手を繋ぐ。 「李遠、離れるなよ?」 「うん。」 パンフレットを貰い、二人で色々見ながら歩いてた。 高校の学祭は初めてで、何もかもが面白く見えた。 私はいつの間にか櫂翔の手を離していたらしく、気付いたら櫂翔がいなかった。 「…………あれ?…………櫂翔?」 周りを見渡しても櫂翔がいなく、慌てて探しに戻ろうとしたら、後ろから声をかけられた。 「李維さん?」 「…え?」 振り返ると先生みたいな人が呆然と立っていた。 ママの名前を呼ばれたから、知り合いかと思い聞いてみる。 「あの…ママを知ってるんですか?」 「ママ?あぁ…お前、李遠か?」 「…はい。…そうですけど…。」 「そっかぁ…。おっきくなったなぁ…。」 そう言いながら抱き着いてきた人にビクッとする。 「…あの…離してください…。」 抱き着いてきた人の胸を押し、離れようとしたけど、ビクともしなく困っていた。 「李遠、何でここにいるんだ?熾遠は一緒じゃないのか?」 抵抗していても、離してくれずに質問ばかりする人にイライラしながら、櫂翔から離れてしまった自分に後悔した。 だんだん目に涙が溜まって来た頃、聞き覚えがある声が聞こえた。
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1838人が本棚に入れています
本棚に追加