十章

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『諒さん。李遠を離してください。』 パッと声がする方を向けば魁さんがいた。 「か…魁さぁん。」 魁さんを見た安心感から涙が溢れて、ポロポロないた。 「李遠!?何で泣くんだ?」 抱きついていた人は、オロオロとしながら私の背中をポンポン叩いてくれていた。 『諒さん。李遠は人見知りなんですよ。とりあえず、離してください。』 魁さんの言葉にやっと離してくれ、そのまま魁さんに抱きついた。 『ほら李遠もう大丈夫だから泣くな。あの人は宝龍の先代だ。』 「…グス…。…魁さん…櫂翔…」 『…あぁ、すぐ来る。お前が迷子になるから皆探してたんだぞ?』 魁さんに頭を撫でられ、だんだん落ち着きを取り戻していた。 「おい魁。何で李遠がお前にはなついてんだ?」 落ち着きを取り戻していたのに、また諒さんと呼ばれた人が喋るから、ビクッとして魁さんの後ろに隠れた。 『何回も会ってるからですよ。李遠泣かしたら、沙綾が怒りますよ。』 「泣かしてないだろ?なぁ李遠?」 急に聞かれても、さっきのはこの人のせいだし…っと考えていると、バタバタと足音が聞こえた。 「李遠!」 「あ…櫂翔!」 走ってきた櫂翔に魁さんから離れて抱きついた。 「ったく…勝手に居なくなるな。探したぞ。」 「違うよ?櫂翔が居なかったんだよ?」 「…お前は…少し待ってろよって言っただろ?」 「…え??…いつ??」 「猫の置物見てるとき。」 「…聞いてない…。」 「電話してる間に見失って焦った。」 「…ごめん。」 櫂翔に謝るとギュッと抱き締めてくれた。 「魁さん。ありがとうございました。」 『あぁ。気にすんな。李遠?もう櫂翔から離れんなよ?』 「あぅ…ごめんなさい…。」 魁さんにも謝ると頭を撫でてくれた。
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