十一章

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マンションの前に来ると熾遠はそのまま駐輪所に向かいバイクを止めた。 「櫂翔が帰って来るまで、俺が一緒に居てやる。」 「え?もう何処も行かないから大丈夫だよ?」 「ダメだ。」 熾遠はそう言うと、私の手を引き中に入った。 部屋に帰るとリビングからライチが走って玄関まで来た。 「ライチ、ただいま。」 ライチを抱き上げ、そのままキッチンに向かい、冷蔵庫からジュースを取りだし熾遠が待つリビングに行く。 「はい熾遠。」 「あぁ、ありがとう。李遠、とりあえず櫂翔に電話しろ。」 「はぁい。」 熾遠に逆らうと怖いから、言われた通りに櫂翔に電話をすれば、すぐに電話に出た。 〈李遠、何処に行ってた?〉 もしもしを言う前に櫂翔に言われ、そのまま答える。 「えっと…コンビニ。」 〈…はぁ…。〉 「あぅ…ゴメンね櫂翔。」 〈あぁ、ご飯食べたか?〉 「まだだよ。今帰って来たから。」 〈何食べるんだ?〉 「ん?サンドイッチ。」 〈…それだけか?〉 「うん。櫂翔もちゃんと食べてね?」 考え事をしていたのか、櫂翔は少し黙っていた。 〈あぁ…熾遠まだいるか?〉 「うん。代わる?」 〈あぁ。〉 「わかった。待ってね?熾遠、櫂翔が代わってって。」 「あ?はいよ。…………あぁ………わかった。………あぁ、じゃあな。ほら李遠。」 「櫂翔?お仕事頑張ってね。」 〈あぁ。なるべく早く帰るからな。〉 「ん。わかった。」 〈いい子にしてろよ?〉 「はぁい。」 櫂翔との電話を切ると、フッと熾遠を見ると誰かに電話していた。
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