十一章

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携帯の目覚ましがなり出して、手だけ伸ばして目覚ましを止める。 目を擦りながら起き上がろうとしたら、身体が動かない事に気づく。 ギュッと抱き締められていて、寝ていても離さない櫂翔は凄いと思う。 とりあえず櫂翔を起こそうと声を掛けた。 「櫂翔…櫂翔おきて?」 やっぱり素直には起きてくれない櫂翔を動かない身体で頑張って起こす。 しばらく声をかけ続けると、いつの間にかライチがベッドに乗り、櫂翔の顔を舐めながら起こしてくれた。 「………ん………。」 「起きて櫂翔。」 「……あぁ。…おはよ李遠。」 「おはよ。ライチありがとう。」 「ニャ~。」 得意気に鳴いて見せたライチを見ていて、フッと気がつけば櫂翔の唇が重なった。 毎日の事に慣れたのか自然と櫂翔を受け入れる。 私が苦しくなって来た頃、櫂翔は唇を離した。 櫂翔は上半身だけ起こしタバコに火を着けるのを見ながら、私も準備しようと身体にシーツを巻き付け起き上がる。 不意に櫂翔の視線が気になり、櫂翔の方を向いた。 「なに?」 「いや。綺麗だなって思って。」 「綺麗じゃないでしょ?」 「李遠は綺麗だぞ。しかもその格好…誘ってんのか?」 「なっ!そんなんじゃないもん。」 顔を真っ赤にしながら反論すれば、櫂翔はクスクス笑いだした。 「冗談だ。ほら準備するぞ。綾が朝一から来るって言ってたからな。」 「そうなの?魁さん次第みたいに言ってたのに…。」 「昨日魁さんに会った時に言われた。綾が朝一で行くって張り切ってるって。」 「そっか。じゃあ櫂翔も早く準備してね?」 「あぁ。」 ワクワクしながら着替えて櫂翔と早めに家を出て学校に向かった。
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