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教室に入ってきた葵は私を見て呼んだ。
「い~ちゃん!」
「なに?」
「櫂翔さんが帰るから一緒に来いって。」
「わかった。櫂翔もわざわざ葵に言わなくても、電話すれば良いのに…。」
「今まで一緒にいたから、ついでだよ。」
「そう?ところで…櫂翔どこで待ってるの?」
「ん?迎えに来るって。…ほら、来たみたいだよ?」
そう言う葵に耳をすませば、遠くからキャーと悲鳴に近い声が、だんだんと近づいて来ていた。
「…本当だ。」
そう呟き帰る支度を始めた。
ちょうど鞄を持ったとき、熾遠が教室に入ってきた。
「李遠、帰るぞ。」
「あれ?熾遠がお迎え?櫂翔は?」
「先に外に行ってる。ほら行くぞ?」
そう言われ、熾遠に手を引かれ歩き出す。
教室の奥の方ではギャル達の声がしていた。
「何で熾遠さんを呼び捨てにしてるの!?」
「何様のつもりなのよ!」
その時、熾遠の足がピタッと止まり、私は熾遠にぶつかってしまった。
「熾遠?どうしたの?」
急に止まった熾遠に不思議に思い、熾遠を呼ぶと、熾遠は振り返り、クラス中に聞こえるように言った。
「おぃ。お前ら…李遠に何かしたら許さねぇからな。」
そう言うと熾遠はまた歩きだした。
しばらく歩いた頃、熾遠は唐突に言い出した。
「あんな事、いつも言われてるのか?」
「まぁ…葵とか居ないときはね。それに…口だけの奴に負けないよ。」
「李遠?何かされたらすぐに言うんだぞ?」
「うん。熾遠ありがとう。」
そう言い熾遠に抱きついた。
抱きついたまま、熾遠を見上げ笑いながら言う。
「それに…喧嘩は売られたら買わないとね?負けたら、ママとパパに怒られちゃう。」
「ふっ。そうだな。でも…李遠だけでどうにもならなかった時は早めに言えよ?お前に何かあったら櫂翔がキレるぞ。」
熾遠は私が言いたい事がわかり、笑いながら言い、頭を撫でてくれた。
「うん。あっ…さっきのは櫂翔にまだ言わないでね?ヤバくなったら私から言うから。」
「わかった。ほら早く行くぞ。櫂翔が待ってる。」
「うん!」
そう言い、また歩き出した。
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