三章

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教室に入ってきた葵は私を見て呼んだ。 「い~ちゃん!」 「なに?」 「櫂翔さんが帰るから一緒に来いって。」 「わかった。櫂翔もわざわざ葵に言わなくても、電話すれば良いのに…。」 「今まで一緒にいたから、ついでだよ。」 「そう?ところで…櫂翔どこで待ってるの?」 「ん?迎えに来るって。…ほら、来たみたいだよ?」 そう言う葵に耳をすませば、遠くからキャーと悲鳴に近い声が、だんだんと近づいて来ていた。 「…本当だ。」 そう呟き帰る支度を始めた。 ちょうど鞄を持ったとき、熾遠が教室に入ってきた。 「李遠、帰るぞ。」 「あれ?熾遠がお迎え?櫂翔は?」 「先に外に行ってる。ほら行くぞ?」 そう言われ、熾遠に手を引かれ歩き出す。 教室の奥の方ではギャル達の声がしていた。 「何で熾遠さんを呼び捨てにしてるの!?」 「何様のつもりなのよ!」 その時、熾遠の足がピタッと止まり、私は熾遠にぶつかってしまった。 「熾遠?どうしたの?」 急に止まった熾遠に不思議に思い、熾遠を呼ぶと、熾遠は振り返り、クラス中に聞こえるように言った。 「おぃ。お前ら…李遠に何かしたら許さねぇからな。」 そう言うと熾遠はまた歩きだした。 しばらく歩いた頃、熾遠は唐突に言い出した。 「あんな事、いつも言われてるのか?」 「まぁ…葵とか居ないときはね。それに…口だけの奴に負けないよ。」 「李遠?何かされたらすぐに言うんだぞ?」 「うん。熾遠ありがとう。」 そう言い熾遠に抱きついた。 抱きついたまま、熾遠を見上げ笑いながら言う。 「それに…喧嘩は売られたら買わないとね?負けたら、ママとパパに怒られちゃう。」 「ふっ。そうだな。でも…李遠だけでどうにもならなかった時は早めに言えよ?お前に何かあったら櫂翔がキレるぞ。」 熾遠は私が言いたい事がわかり、笑いながら言い、頭を撫でてくれた。 「うん。あっ…さっきのは櫂翔にまだ言わないでね?ヤバくなったら私から言うから。」 「わかった。ほら早く行くぞ。櫂翔が待ってる。」 「うん!」 そう言い、また歩き出した。
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