一章

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「お前ら…何してる?」 低く心地がいい声が響いた。 その声に男達は慌てて私から手を離して、振り返る。 「あ…獅童さん…。」 「いえ…この子が迷ってたから、教室に送ってやろうと…」 青い顔で一生懸命、言い訳をしだした男達に少し呆れながら聞いていた。 「どう見ても嫌がってんだろ…。」 「そんな事ないですよ。ね?彼女?」 ナンパしてきた男は私に聞いてきたが、この人達を庇う気もないので、さっきの事を素直に伝えた。 「違う。私は教室に行きたいのに、無理矢理違う所に拉致られる所だった。」 そう言うと、獅童さんは男を見て、さっきより低い声で呟いた。 「…違うじゃねぇか…」 その声を聞いた男達はヒッと声を上げながら 「すいません!」 と言いながら走り去った。 男達が走り去った後、獅童さんは私の方を振り向き言った。 「大丈夫か?」 「大丈夫です。ありがとうございました。」 そう言いながら、獅童さんの顔を見た。 今ハッキリ見たけど…カッコいい。 顔のパーツなんて、キリッとしていて、髪は金髪に赤のメッシュが入っていた。 しばらく見惚れていると、声をかけられた。 「教室まで送る。」 その言葉にハッとした。 「あ…いえ…。いいです。」 遠慮する私に、獅童さんは笑いながら言った。 「いいから来い。お前…何組?」 「あ…A組です。」 「ふぅん。名前は?」 「李遠。あの…貴方は?」 そう聞くと、獅童さんは葵みたいに驚いた顔をした。 「…知らねぇのか?」 …だから…知ってたら怖いって。 「知りません。会ったばかりの人を知ってたら逆に怖い。」 葵に言ったように言うと、笑い出した。
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