始まりの夏

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「立川君? ですよね?」 外掃除のかったるい中、竹箒を持った俺に、ある1人の女生徒が話しかけてきた。 綺麗な艶やかな黒髪。色白で小さな顔にちょこんとついた鼻。少し細い目はたれ目ではなく、つり目。クセのない髪は、腰まで伸びていて、枝毛なんてありはしないだろう。 身長は、俺の肩ほどだ。 手を後ろで組み、一歩一歩楽しむように近づいてきた。 「立川君、ですよね?」 彼女は、もう一度確かめるように小さな口を動かした。 立川は、そんな彼女に魅了されながら、首を縦に振った。 「よかった。私、隣のクラスの水瀬 瑞希と言います。」 口元だけ緩め、水瀬は、さらに立川に近づいた。 「水瀬……」 一度も同じクラスになったことがなく、名前こそ初めて聞いたようなものだったが、一学年二クラスという少子化の影響をばっちり受けた高校では、姿は幾度も見かけた。
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