高貴なお雛様

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事の始まりは雛祭りも近いある夜の事。突然、近所に住む若い母親Aが訪ねてきた。彼女は開口一番 「お雛様貸してください」 何でも、義母にお雛様(と娘)の写メを送れと言われたらしい。冗談じゃない。でも、相手は玄関の中にいる。 「私」の雛人形を「他人」になんて貸し出せない。他をあたってくれとかなり冷たくあしらった。 するとAはたまたま玄関に飾ってあった古い雛を見て 「じゃあ、コレをちょうだい!」 さらに冗談じゃない。そのお雛様は大正の逸品で、元持ち主さんに日参して礼を尽くして譲り受けた家宝だぞ! 「お宅のはどうしたんですか、娘さんもう3歳位ですよね?」 と聞き返したら、 「初節句の時に義母からお雛代をもらっていたけど使い込んじゃって…結局ずるずる買ってなくて…だからお願いします、お人形集めててたくさん持ってるのなら、1セット位!」
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