プロローグ

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 急いで杖を出し、こっそりと熊に向ける。 モノの杖は大学からの支給品で、杖とは全く相性が合っていない。しかし、使わせてもらっているからとモノは文句を言わずにこの杖を使ってきた。 そのためか、得意なはずの炎の魔法でも10回に1回はハズれるのだ。 「火よ槍となりて敵を貫け、ファイアランス」  呪文を唱えると、モノの杖から魔法陣が描き出され、魔法陣からは炎の槍が幾重にも重なり、少女に襲いかかった。  つまり、失敗したのだ。  命中率を上げるために簡単な初級魔法にしたのに何をやってるんだ、自分! そう、頭では自分を責めながら、とっさに頭の中では自分が発動出来る水魔法を探り、口から出た声は少女へと危険を知らせようとしていた。 「危ない、逃げて!」  モノが叫ぶと少女は首をこちらに向け、ニコリと笑った。 笑顔を向けてきた少女の足下からは水が湧き出で、少女と熊を守るように壁を形成する。  魔法を使う熊などは聞いたことがない。 つまり、モノ自身が紡いでいた水魔法よりも先に少女は詠唱することなく水の壁を造り上げたのだ。  その間、0.5秒。恐るべき少女の技術に一体何が起こったかをモノには最初理解出来なかった。
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