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どきりと心臓が鳴った。
俺だって、サービスだけしてくれたらそれでいい、と思ったから。
「他のお客さんにはね。無理矢理ホテルに連れて行かれたり、家に連れて行かれたり。酷い時には、人目が有るのに、服の中に手を入れてきたり」
「で、でも。恋人になるって言ったら、普通の人は勘違いするかも知れないし」
「賢治くんは、嫌がる彼女を無理矢理襲うの?」
「い、いや、それは無いけど」
「私はね、本当に相手の人を好きになりたいだけなの。でもね、殆どの人は仕事の内容も、私の言葉も無視して、エッチな事しか望まなかった」
「………………」
しいなはゆっくりと俺の手を取ると、後ずさりしながら俺を引いていった。
そして、近くのガードレールの支柱に腰をかけると、俺を見上げた。
「ね、この仕事って変な仕事だと思ってるでしょ?」
「あ、まあ。恋人になって本気で好きになる商売なんて、今まで聞いた事がない」
「だよね」
涙で頬を濡らしたまま、しいなは再びにっこりと笑った。
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