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「人を好きになるのなんて時間は要らない。私は思ったよ? 最初は商売の上で明るく振舞おうとしたけど、こうして話してると、本気で賢治くんの事が好きになってきたの」
どきり、とした。
本気で好きって。
「しょ、商売だったら、そんな簡単に好きって言えるんだ?」
「傷付けるのが嫌だから、彼女を作ろうとしないんでしょ? それは優しさだよ。そういう所が、素敵だと思う」
「しょ、商売なくせに……んっ」
唇に、柔らかい物が触れた。
それは生温かくて、少し湿っていて、同時にレモンのようないい匂いがした。
……初めてで一瞬のことだったけど、一気に体が脱力して何も考えられなくなった。
「これ以上、何をしたら信じてくれる? 最初の望みどおり、私とつながってもいいよ? でもほら、これだけは感じて」
しいなは俺の手を握ると、その手を開いて自分の心臓の辺りへと動かす。
「好きだから……どきどきしてる。少し恥ずかしかったから。嘘だったら、こんなにどきどきしない」
言ったとおり、しいなの心臓は早くて、俺の心臓の動きと同調した。
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